COLUMN

職人として生きる。

多能工の必要性と将来性 ― 一人の職人の可能性を広げることが、現場の未来を守る ―

# 59

多能工の必要性と将来性 ― 一人の職人の可能性を広げることが、現場の未来を守る ―

  • 建築業界の未来を考える
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多能工の必要性と将来性 ― 一人の職人の可能性を広げることが、現場の未来を守る ―

1.はじめに――現場は、昔から「一人の力」だけでは動いていない

建設やリフォームの現場は、昔から多くの職人の力によって成り立ってきました。

大工がいて、電気職人がいて、設備職人がいて、内装職人がいる。

それぞれが自分の専門分野を持ち、互いの仕事をつなぎながら、一つの建物を完成させていく。

現場を知る人なら、誰もが分かっていることです。

だからこそ、昔から現場では、

「次の職人が仕事をしやすいようにしておこう」

「ここまで終わらせておけば、次の工程に入れる」

「この納まりなら、後で設備屋さんも困らない」

といった、職人同士の気遣いや経験によって、工事が進められてきました。

これは、今になって突然生まれた考え方ではありません。

建設業は、もともと「一人で完結する仕事」ではないからです。

一つの家をつくるにも、リフォームするにも、多くの専門職が関わります。

そして今、その当たり前だった現場の仕組みが、少しずつ難しくなっています。

大きな理由の一つが、職人の高齢化と人材不足です。

長年現場を支えてきた職人が第一線から退いていく一方で、次の世代を十分に育てきれないまま、技術や経験が失われていく。

さらに、リフォームでは既存住宅の状態が一軒一軒違い、お客様の要望も多様になっています。

新築のように、決められた手順だけで進められる現場ばかりではありません。

「開けてみなければ分からない」

「予定していた納まりでは対応できない」

そんな場面もあります。

だからこれからの現場には、専門技術を持つ職人に加えて、複数の工程を理解し、状況に応じて動ける職人が、これまで以上に必要になっています。

その役割を担うのが、多能工です。

多能工の必要性と将来性 ― 一人の職人の可能性を広げることが、現場の未来を守る ―

2.多能工とは――「何でも屋」ではなく、技術の幅を持った職人

多能工という言葉を聞くと、

「一人で何でもできる職人」

というイメージを持つかもしれません。

しかし、実際の多能工育成は、「一人に何でもやらせる」という話ではありません。

大工なら大工としての技術を持ちながら、設備や電気、内装など、周辺の仕事についても理解を深めていく。

あるいは、設備を専門とする職人が、内装や建築の基本を学ぶ。

そうやって自分の専門領域を広げていくのです。

ここで大切なのは、専門性を捨てることではありません。

むしろ、自分の専門を持ったうえで、他の仕事を理解することに意味があります。

たとえば、大工が設備の基本を理解していれば、設備配管がどこを通るのかを考えて施工できます。

設備を理解している職人なら、後工程で必要になるスペースを意識して仕事ができます。

内装を知っていれば、最終的な仕上がりを考えながら、その前の工程を判断できます。

一つの仕事だけを見るのではなく、

「自分の仕事の先には、誰の仕事があるのか」

を理解できるようになる。

それが、多能工の大きな価値です。

だから多能工は、「何でもできる人」ではありません。

自分の専門を軸に、仕事の幅を広げ、現場での判断力を高めた職人。

それが、これからの多能工だと考えています。

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3.なぜ今、多能工が必要なのか――職人不足だけではない

では、なぜ今になって、多能工がこれほど注目されているのでしょうか。

単純に「職人が足りないから」だけではありません。

現場では、一つの工程が予定通りに進まないことで、その後の工程にも影響が出ます。

例えば、設備工事の一部が残っているために、内装の仕上げに入れない。

大工工事の変更によって、電気や設備の対応が必要になる。

予定していた職人が確保できず、工事の日程を組み直さなければならない。

こうしたことは、建設業では昔から起こってきました。

ただ、職人の数が減り、特定の職種に仕事が集中すると、その影響が以前より大きくなります。

一人の職人に依存していた工程が止まれば、現場全体が止まってしまう。

会社としても、予定を組みにくくなります。

お客様への説明も増えます。

そして、現場で働く職人にも負担がかかります。

だから必要なのは、単純に「一人で二人分働く人」をつくることではありません。

特定の職人がいなければ何も進まない、という状態を少しずつ減らしていくこと。

そのために、一人ひとりの職人が対応できる範囲を広げる。

そして、現場全体として柔軟に動ける体制をつくる。

多能工化には、そうした意味があります。

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4.多能工が現場にもたらすもの――「できる仕事」が増えるだけではない

多能工が増えると、会社にとってさまざまなメリットがあります。

まず、現場での対応力が高まります。

予定外の作業が発生したとき、自分の専門外だからといって、すぐに工事を止めるのではなく、ある程度の対応ができる。

他業種との取り合いについても理解があるため、事前に問題を発見しやすくなります。

結果として、手戻りや待ち時間を減らせる可能性があります。

また、職人の配置にも柔軟性が生まれます。

「この工程には、この職人がいなければならない」

という状況が一つずつ減っていけば、会社として現場を組み立てやすくなります。

しかし、私は多能工化の価値を、ここだけで考えてはいけないと思っています。

本当に大切なのは、

職人自身の「できること」が増えることです。

一つの技術しか知らなかった職人が、別の技術を覚える。

今まで分からなかった工程が理解できるようになる。

自分の仕事が建物全体の中でどうつながっているのかが見えるようになる。

すると、仕事に対する視野が変わります。

「言われた仕事をする」から、

「現場を見て、自分で考えて動く」

へと変わっていく。

この変化は、職人としての自信にもつながります。

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5.多能工を育てる――技術だけではなく、経験を渡す

では、どうすれば多能工は育つのでしょうか。

ここには、建設業界が長年抱えてきた課題があります。

職人の世界には、優れた技術を持つ人がたくさんいます。

しかし、

「自分はできる」と「人に教えられる」は、同じではありません。

長年の経験で身につけた技術ほど、本人にとっては当たり前になっています。

「ここを見れば分かる」

「こうやればいい」

「普通に考えれば分かる」

そう思ってしまう。

でも、初めて学ぶ人には、その「当たり前」が分かりません。

だから、これから必要なのは、ベテランの技術を若手にただ見せることだけではありません。

なぜそうするのか。

どこを見れば判断できるのか。

失敗すると何が起こるのか。

どこに注意すれば品質が変わるのか。

そうした経験を、言葉にして渡していくことが必要です。

そして、座学だけでも人は育ちません。

実際に手を動かす。

失敗する。

先輩に教えてもらう。

もう一度やってみる。

できるようになる。

この繰り返しが、職人を育てます。

だからこそ企業には、社内教育、外部研修、資格取得支援、実技訓練などを組み合わせた、継続的な育成の仕組みが必要です。

「育つ人を待つ」のではなく、「人が育つ環境を会社がつくる」。

これからの職人不足時代には、この発想が欠かせません。

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6.企業が考えるべきこと――「人手不足対策」から「人が育つ会社」へ

多能工育成を始めるとき、多くの会社が最初に考えるのは、

「どんな技術を教えればいいか」

だと思います。

もちろん、それは大切です。

しかし、それと同じくらい重要なのが、

「その人が成長した先に、何があるのか」

を会社が示すことです。

できる仕事が増えたら、どう評価するのか。

資格を取得したら、何が変わるのか。

後輩を教えられるようになったら、どんな役割を任せるのか。

現場を任せられるようになったら、どんなキャリアがあるのか。

ここが見えなければ、若い職人は努力の意味を感じにくくなります。

逆に、

「これができるようになれば、次はこの仕事を任せてもらえる」

「もっと技術を身につければ、自分の仕事の幅が広がる」

「ここで経験を積めば、将来はこんな職人になれる」

という道筋が見えれば、学ぶ理由が生まれます。

人は、未来が見えると頑張れます。

だから、職人を育てる会社に必要なのは、教育制度だけではありません。

成長を認める文化と、成長した先の未来を用意すること。

多能工育成を会社の人材戦略として考えるなら、ここまで取り組む必要があります。

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7.多能工は、若い職人の「将来」を広げる

私は、多能工化を「会社のためだけの仕組み」にしてはいけないと思っています。

なぜなら、技術を身につけるのは、一人の人間だからです。

若い職人が入社したとき、その人が抱えている不安は、

「会社にとって自分が役に立つか」

だけではありません。

「この仕事を続けていけるだろうか」

「何年後、自分はどんな職人になっているだろう」

「年齢を重ねても、この仕事で食べていけるだろうか」

そんな不安もあります。

だからこそ、会社は「仕事」を与えるだけではなく、「成長できる道」を示してあげる必要があります。

一つの技術を覚える。

次の技術に挑戦する。

できる仕事が増える。

任される仕事が増える。

後輩を教えられるようになる。

やがて、自分が教えてもらった技術を、次の世代へ渡す側になる。

その循環ができたとき、職人の仕事はもっと誇りあるものになります。

「自分には、まだ伸びしろがある」

そう思えることは、働き続ける大きな力になります。

多能工という道は、職人一人ひとりに、

「一生現場で食べていける力」

を身につけるための、一つの可能性でもあるので

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8.これからの現場――技術とデジタル、人と人が支え合う

これから建設・リフォーム業界には、さらに多くの変化が訪れます。

施工管理アプリ、AI、IoT、BIMなど、デジタル技術を活用する場面も増えていくでしょう。

しかし、どれだけ技術が進歩しても、現場から「人」がなくなるわけではありません。

既存の建物を見て、

「これは図面通りにはいかないな」

と判断する。

お客様の言葉にならない要望をくみ取る。

他の職人に、

「ここ、先にやっておきますよ」

と声をかける。

若い職人が失敗したとき、

「大丈夫。もう一回やってみよう」

と教える。

こうしたことは、人にしかできません。

だから、これからの職人に求められるのは、昔の技術か新しい技術か、そのどちらかではありません。

技術を持ち、学び続け、変化に対応し、人と協力できること。

それが、これからの現場で価値を持つ力になっていくはずです。

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9.まとめ――一人の職人を育てることは、未来をつなぐこと

多能工という言葉だけを見ると、

「一人でいろいろな仕事ができる職人」

と思われるかもしれません。

しかし、その本質はもっと深いところにあります。

多能工化とは、職人に無理をさせて仕事を増やすことではありません。

専門技術を持った職人が、さらに新しい技術を身につけ、自分自身の可能性を広げていくことです。

それによって、現場には柔軟性が生まれます。

会社には人材の厚みが生まれます。

お客様には、より安心して工事を任せてもらえる体制が生まれます。

そして何より、

一人の職人が、長くこの仕事を続けていくための力が増えていきます。

建設業界には、何十年もの間、先輩から後輩へ受け継がれてきた技術があります。

言葉だけでは伝えきれない技術。

現場でしか身につかない感覚。

失敗したからこそ分かること。

お客様に喜んでもらったときの誇らしさ。

それらを次の世代へ渡していくことは、今を生きる私たちの大切な役割です。

だからこそ、

「職人が足りないから、多能工を育てる」

だけではなく、

「これからも職人が生きていける業界にするために、多能工という可能性を育てる」

という考え方が必要なのではないでしょうか。

一人の職人が、もう一つの技術を覚える。

その技術によって、誰かの困りごとを解決する。

お客様から「ありがとう」と言ってもらう。

その経験が、その職人の自信になる。

やがて、その職人が後輩に技術を教える。

そして、また次の職人へ受け継がれていく。

技術は、人から人へ渡っていくものです。

だからこそ、人を育てなければ、技術も未来へ残りません。

一人の職人を育てることは、一つの会社を強くすること。

一つの会社を強くすることは、地域の現場を守ること。

そして、

一人の職人が次の職人を育てることは、建設・リフォーム業界の未来をつなぐことです。

私たちJMCA(多能工職人訓練学校)は、単に「複数の仕事ができる人」を育てたいのではありません。

自分の技術に誇りを持ち、仲間から信頼され、お客様から必要とされる。

そして何より、

「この仕事を選んでよかった」

と、自分自身の人生に誇りを持てる職人を育てたい。

その一人ひとりの成長が、やがて現場を変えていく。

そして、その現場の変化が、次の世代の職人に希望を与えていく。

多能工とは、単なる「人手不足への対策」ではありません。

職人一人ひとりの可能性を広げ、技術を未来へつなぎ、現場そのものの未来を守るための、新しい力なのです。

今回は【多能工の必要性と将来性 ― 一人の職人の可能性を広げることが、現場の未来を守る ―】というテーマで書かせていただきました。いかがでしたでしょうか?

多能工職人学校JMCAでは、単に技術を教えるのではなく「お客様への接し方」や「仕事への取り組み方」「仲間との団結」というマインドの部分を重要視しており、これまでの職人のイメージをより良くし、もっと沢山の子供達に憧れられるような「愛される職人」を育成する。

そして、そんな職人を建築・リフォーム業界に増やしていく。

このような使命を掲げています。

私たちの理念に共感し、職人不足問題の解決に共に取り組んでいただけるパートナー様を募集しています。

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COST

費用・助成金

職人育成のための授業料については、補助金を活用する支援を行っています。企業からの派遣、個人としての入校など、入校の経路は様々ですが、多能工職人を育成するための費用面でのハードルを国の補助金を使ってサポートし、体制を整えていますので、ぜひ、ご相談ご活用ください。

ACCESS

施設紹介・アクセス

実際の住宅を再現した実習スペースや、水まわり設備など、現場を想定した充実の実習環境を整えています。さらに、個室の寮や食事スペースも完備。学びを支える充実したJMCAの施設や設備について、ご紹介します。