COLUMN

職人として生きる。

職人不足の現状とその影響 ― 人がいなくなるのではない。受け継ぐ人がいなくなることが、本当の危機だ。―

# 58

職人不足の現状とその影響 ― 人がいなくなるのではない。受け継ぐ人がいなくなることが、本当の危機だ。―

  • 建築業界の未来を考える
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職人不足の現状とその影響 ― 人がいなくなるのではない。受け継ぐ人がいなくなることが、本当の危機だ。―

はじめに

朝早く、まだ街が眠っている時間。

一人の職人が現場へ向かいます。

道具を手に取り、昨日の続きを確認する。

木材に触れ、壁を見て、ほんのわずかな違いを感じ取る。

その姿は、決して特別なものには見えないかもしれません。

しかし、その手には何十年もの経験があります。

失敗した記憶があります。

先輩から受け継いだ教えがあります。

そして、

「この家で暮らす人に、安心してもらいたい。」

という、言葉にできない責任感があります。

日本の住宅は、そんな職人たちの手によってつくられてきました。

ところが今、その職人たちが減っています。

そして、もっと深刻なのは、

職人が減ることで、技術だけではなく、その人が持っていた経験や想いまで失われてしまうことです。

職人不足は、単なる「人手不足」ではありません。

それは、日本の住まいを支えてきた文化と技術の継承が途切れてしまう危機なのです。

職人不足の現状とその影響 ― 人がいなくなるのではない。受け継ぐ人がいなくなることが、本当の危機だ。―

職人が減っている。その背景にあるもの

建築業界では、職人の高齢化と若手人材の不足が大きな課題となっています。

長年現場を支えてきた職人が、少しずつ第一線を離れていく。

一方で、その技術を受け継ぐ若者が十分に育っていない。

このままでは、現場を支えてきた技術の「空白」が生まれてしまいます。

もちろん、若者が職人を目指さなくなった理由は一つではありません。

長時間労働。

厳しい現場環境。

将来への不安。

給与や待遇への不安。

そして、

「職人になったら、どんな未来が待っているのか分からない。」

という不安もあります。

しかし、若者が職人という仕事を嫌っているとは限りません。

むしろ、

「手に職をつけたい」

「自分にしかできない仕事がしたい」

「誰かの役に立つ仕事がしたい」

そう考えている若者は、決して少なくありません。

だからこそ、私たちが変えなければならないのは、若者の意識だけではありません。

職人が誇りを持って働き、未来を描ける環境そのものです。

職人不足の現状とその影響 ― 人がいなくなるのではない。受け継ぐ人がいなくなることが、本当の危機だ。―

一人の職人がいなくなるということ

職人が一人、現場を離れる。

数字だけを見れば、「人員が一人減った」という話かもしれません。

しかし、本当に失われるものは、それだけでしょうか。

「この木なら、ここを少し逃がしたほうがいい。」

「この壁は、あと数ミリ調整したほうがきれいに納まる。」

「ここはお客様から見えなくても、丁寧に仕上げよう。」

そんな判断は、長い年月をかけて身につけたものです。

マニュアルに書かれていない。

図面にも書かれていない。

数字にも表しにくい。

けれど、確かに存在する技術があります。

そして、その技術は職人とともに蓄積されてきました。

だから一人の職人がいなくなるということは、

一人分の労働力が失われるだけではありません。

その人が何十年もかけて培ってきた、

経験。

判断力。

工夫。

誇り。

そして、次の世代へ伝えようとしていた想いまで失われる可能性があるのです。

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職人不足が、お客様の暮らしにも影響する

職人不足は、業界の中だけの問題ではありません。

最終的に影響を受けるのは、住宅を必要とするお客様です。

職人が不足すれば、工期が延びる。

人材確保のためのコストが増える。

現場の負担が大きくなる。

そして、十分な経験を積んでいない人材に過度な負担がかかれば、品質の安定にも影響する可能性があります。

住宅は、単なる商品ではありません。

そこには家族の生活があります。

子どもの成長があります。

大切な思い出があります。

何十年と暮らしていく場所があります。

だからこそ、

「人が足りないから仕方がない。」

で済ませてはいけないのです。

職人不足を解決することは、

お客様の安心を守ることでもあるのです。

職人不足の現状とその影響 ― 人がいなくなるのではない。受け継ぐ人がいなくなることが、本当の危機だ。―

本当に必要なのは「採用」だけではない

では、どうすれば職人不足を解決できるのでしょうか。

もちろん、採用は重要です。

しかし、採用だけでは問題は解決しません。

大切なのは、

「入ってきた人を、どう育てるか。」

です。

そして、

「育った人が、どうすれば長く働き続けられるか。」

です。

人を採用する。

教える。

失敗を支える。

できるようになったことを認める。

次の目標を一緒に考える。

そして、いつかその人が後輩を教える側になる。

この循環をつくることが、職人不足を解決する本当の力になります。

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「見て覚えろ」から「一緒に育てる」へ

昔の職人教育には、

「見て覚えろ。」

という文化がありました。

先輩の背中を見て、自分で考え、失敗しながら技術を身につけていく。

その教育によって、多くの素晴らしい職人が生まれてきたことも事実です。

しかし、今は時代が変わりました。

現場は忙しく、人手も足りません。

教える側にも時間の余裕がありません。

だからこそ、これからは、

「職人の背中を見せる教育」から、「職人と一緒に育つ教育」へ。

変えていく必要があります。

何を覚えればいいのか。

次に何を目指せばいいのか。

なぜ、この作業が必要なのか。

失敗したとき、どう改善すればいいのか。

一つひとつを言葉にして伝える。

そして、できたときには、

「よくやったな。」

と認めてあげる。

たった一言が、若い職人の人生を変えることがあります。

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職人を育てることは、人の人生を育てること

若手職人が初めて一人で仕事を任された日。

初めてお客様から「ありがとう」と言われた日。

初めて先輩から、

「もう任せても大丈夫だな。」

と言われた日。

その一つひとつが、職人としての自信になります。

最初は何もできなかった若者が、

少しずつ技術を身につけ、

やがて誰かに教える側になる。

そして、その人からまた次の世代へ技術が受け継がれていく。

これが、職人文化の本当の強さです。

だから職人育成は、単なる社員教育ではありません。

一人の人間が、自分の人生に誇りを持てるようにする仕事です。

そして、その人生が次の世代へつながっていく仕事なのです。

職人不足の現状とその影響 ― 人がいなくなるのではない。受け継ぐ人がいなくなることが、本当の危機だ。―

多能工という新しい可能性

これからの住宅業界では、一つの技術だけではなく、複数の技術を身につけた「多能工」の存在も重要になります。

大工だけではない。

設備も分かる。

内装も分かる。

仕上げも分かる。

工程全体を理解し、他の職人と協力しながら現場を動かせる。

そんな職人が増えれば、一人ひとりの可能性は大きく広がります。

「自分には、この仕事しかできない。」

ではありません。

「自分には、まだできることがある。」

そう思える環境をつくる。

それは職人の可能性を広げるだけではなく、会社そのものの施工力を高めることにもつながります。

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テクノロジーは、職人を支えるためにある

職人不足を解決するために、デジタル技術の活用も進めていく必要があります。

BIM。

CAD。

施工管理アプリ。

3Dスキャン。

AI。

これらの技術は、職人の仕事を奪うためにあるのではありません。

職人が本当に大切な仕事に集中するためにあります。

事務作業を減らす。

情報共有を早くする。

ミスを減らす。

教育を分かりやすくする。

そして、職人が持つ技術を次の世代へ伝えやすくする。

テクノロジーと職人の技術は、対立するものではありません。

人の力を、さらに引き出すために共存していくものです。

職人不足の現状とその影響 ― 人がいなくなるのではない。受け継ぐ人がいなくなることが、本当の危機だ。―

職人が誇れる業界をつくる

職人不足を解決するために、私たちは若者にこう伝えられる業界をつくらなければなりません。

「職人は、かっこいい仕事だ。」

「技術を身につければ、一生の財産になる。」

「努力すれば、未来を切り拓ける。」

「人の暮らしを支える、誇れる仕事だ。」

そんな言葉を、胸を張って伝えられる業界にする。

そのためには、給与や休日などの待遇改善だけでなく、

教育。

評価。

キャリア。

働く環境。

仲間とのつながり。

そして、職人という仕事への誇り。

そのすべてを見直していく必要があります。

職人不足の現状とその影響 ― 人がいなくなるのではない。受け継ぐ人がいなくなることが、本当の危機だ。―

10年後に「育ててよかった」と思える会社へ

人を育てることは、すぐに結果が出るものではありません。

今日入社した若者が、一人前になるまでには時間がかかります。

明日、会社の売上が大きく伸びるわけでもありません。

だからこそ、経営者の決断が必要です。

今、忙しいから育てない。

人が足りないから教育できない。

そうやって先送りしてしまえば、10年後も同じ問題を抱えることになります。

反対に、

「今のうちから一人ずつ育てよう。」

そう決断すれば、

10年後、その若者が会社の中心になっているかもしれません。

後輩を育てているかもしれません。

お客様から信頼される職人になっているかもしれません。

そして経営者自身が、

「あのとき育て始めて、本当によかった。」

と思える日が来るはずです。

職人不足の現状とその影響 ― 人がいなくなるのではない。受け継ぐ人がいなくなることが、本当の危機だ。―

まとめ

職人不足は、建築業界にとって大きな課題です。

しかし、それは同時に、

業界を変えるチャンスでもあります。

採用を変える。

教育を変える。

働き方を変える。

職人の評価を変える。

そして、

「人を育てることが会社の未来をつくる。」

という考え方を、業界全体に広げていく。

職人が一人育てば、一つの現場が強くなる。

一つの現場が強くなれば、会社が強くなる。

そして、その職人が次の職人を育てれば、

技術は未来へつながっていきます。

私たちが守りたいのは、古い技術だけではありません。

その技術に込められた、

「誰かの暮らしを良くしたい。」

「困っている人を助けたい。」

「自分の仕事に誇りを持ちたい。」

という、人の想いです。

職人がいなくなる未来ではなく、

職人が育ち、技術が受け継がれ、若者が誇りを持って働ける未来をつくる。

その未来をつくるのは、特別な誰かではありません。

今、現場にいる私たち一人ひとりです。

JMCAは、多能工育成と職人教育を通じて、一人でも多くの人が「職人になってよかった」と思える業界をつくり、日本の住宅を支えてきた技術と想いを、次の世代へつないでいきます。

一人を育てる。

一つの技術をつなぐ。

そして、その先にある未来を守る。

職人不足という課題の向こう側には、まだ私たちがつくることのできる、希望の未来があります。

おわりに

今回は【職人不足の現状とその影響 ― 人がいなくなるのではない。受け継ぐ人がいなくなることが、本当の危機だ。―】というテーマで書かせていただきました。いかがでしたでしょうか?

多能工職人学校JMCAでは、単に技術を教えるのではなく「お客様への接し方」や「仕事への取り組み方」「仲間との団結」というマインドの部分を重要視しており、これまでの職人のイメージをより良くし、もっと沢山の子供達に憧れられるような「愛される職人」を育成する。

そして、そんな職人を建築・リフォーム業界に増やしていく。

このような使命を掲げています。

私たちの理念に共感し、職人不足問題の解決に共に取り組んでいただけるパートナー様を募集しています。

職人不足の現状とその影響 ― 人がいなくなるのではない。受け継ぐ人がいなくなることが、本当の危機だ。―

 

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職人育成のための授業料については、補助金を活用する支援を行っています。企業からの派遣、個人としての入校など、入校の経路は様々ですが、多能工職人を育成するための費用面でのハードルを国の補助金を使ってサポートし、体制を整えていますので、ぜひ、ご相談ご活用ください。

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実際の住宅を再現した実習スペースや、水まわり設備など、現場を想定した充実の実習環境を整えています。さらに、個室の寮や食事スペースも完備。学びを支える充実したJMCAの施設や設備について、ご紹介します。